流氷ダイブ2003

流氷ダイブ2003

2003年2月22日、北海道・斜里町の知床半島西側の町・宇登呂に行き、流氷ダイビングに初挑戦しました。
私が車椅子のダイバーとしては初めて流氷を潜ったようで、朝日新聞にも取材していただき、北海道版だけかと思っていたら、全国的に報道されてしまいました。その後、流氷ダイブについて質問や感想を聞かれる機会が多くありましたので、ここにまとめてアップすることにしました。


まず、びっくりしたこと
それは、上の宇登呂の海の写真にあるように、網走から宇登呂側の知床半島にかけての流氷は、広大無辺で果てしないものだったということ。流氷とは流れているもの、というイメージがありましたが、これが本当に海なのかと疑うぐらい、見渡す限り、水平線まで流氷の氷原だったということです。自分も含めて多くの方が考えている「流氷は潜っている間に動いて穴が閉じないの?」というイメージは、簡単に打ち崩すされました。ただし、北海道でも場所や時期によって流氷のタイプや厚さは違うそうです。


今回のルート
今回の流氷ダイビングは、ヴァレンタイン・キッズのツアーとして行われたもので、参加者は羽田に集合し、飛行機で羽田から女満別へ飛び、女満別空港からタクシーで網走駅まで行き、斜里駅経由で宇登呂まで行くバスで宇登呂の宿泊先まで行きました。列車を使う方法もあるそうです。ホテル直行のバスの利用が最も安価な方法だと思いますが、通常の観光バスなので乗り降りが大変でした。手を貸してくれた皆さん、最前列の席をゆずってくれたおばちゃんありがとうございました。


オリエンテーション
到着後に、今回の流氷ダイビングの現地サービスであるイルカホテル(ダイビングサービス兼ホテル)に行き、流氷ダイビングについてのオリエンテーションを受けました。機材の氷結防止と安全のために次のような注意がありました。機材やボタン等が凍らないように、エントリー前に機材を濡らさない。レギュレーターが凍らないように強く息をせず、自然でゆっくりとした呼吸を続ける。インフレーター等が凍らないように、過度に使用しない。流氷のすぐ下にある氷が溶けてできた真水と塩水の混ざった1mほどの層は速やかに通過する。
また、流氷の下で見ても小さくて分からない場合があるので、とクリオネの実物を見せてもらいました。水族館でみた通りの天使のような生き物でした。流氷の下でクリオネを見ることも、今回のダイビングの目的のひとつでした。


ダイブ前 流氷ダイビング用意
ダイビング当日は、風もなく、晴天で−5°〜−9°と宇登呂にしては気温が高く、最高の流氷ダイビング日よりでした。耐寒気温は、マイナスとは思えないほど快適。晴れていて風がないことが幸いしたようです。イルカホテルで、再度説明を受けてからドライスーツに着替えました。防寒対策としては、上半身が長袖のインナー、フリース、Tシャツ。下半身がタイツとフリースのジャージ、スキー用の膝下までのロング・ソックスそして靴用のホカロン。他のメンバーもほぼ同じ防寒対策でした。自分はこの装備で、伊豆で潜ってきました。浮力や動き易さなどが異なるので、予行演習をしたことが、浮いてしまって流氷に張り付くといった心配をなくしてくれました。


ダイブ準備

機材のセットアップ
ショップから300mほど沖のポイントには、流氷の上を雪上車に乗って移動しました。エントリーポイントには、一辺が2m程の三角形の穴が開けられていました。チェーンソーで切って開けたそうで、氷の厚みは40センチほど、水は、光の加減で暗く見えましたが、透明度は良さそうでした。各自、機材のセットを行いましたが、オリエンターションでも説明されたように、濡らさないように細心の注意を払いました。フードは今回のために購入し、グローブはドライミットをレンタルしました。
水中カメラは、クリオネにピントを合わせ易いMX10と、流氷の景色や他のダイバーを撮るのに向いているデジカメのどちらを使おうか迷いましたが、ヴァレンタイン・キッズの斎藤さんが、みんなの写真を撮ってくれることになり、自分はクリオネねらいのMX10を持って行くことにしました。


エントリー

エントリー
エントリーは、一辺が2m程の三角形の穴から行います。まず、別のグループの2人がエントリー。我々のグループでは私が最初にエントリーしました。車椅子の上でフードとフィンを付け、氷の地面に降りて、穴に足を落とし、後方に寝ころんでウェイトベルトを装着。(何とこの時の姿が朝日新聞の記事に使われた。)座り直してBCを装着。お湯で曇り止めを洗い流したマスクを付け、レギュレーターをくわえて、後方から押してもらいながら自分で前方に倒れて入水しました。「流氷のすぐ下にある真水と塩水の混ざった1mほどの層は速やかに通過する」という言葉を思い出し、すぐにBCの空気を抜いて潜降しました。


エントリー下から

流氷の世界
説明されたように、真水と塩水の混ざった層は、サラダ油のようにもやもやしていました。その層を抜けて、水深1.5m以下に行くと、流氷でカバーされていることで多少暗くはありましたが、スカっと抜けて、20m以上の透明度がありました。
まず感じたのは、露出していた頬の痛み。未体験だったマイナス水温の−1.7°は、寒さを通り越して痛みでした。しかし、1分もするとその水温にも慣れ(麻痺して?)痛みは感じなくなりました。
余裕が出たところで上を見上げると、流氷の厚さによって光の入り方が異なるため、地球の模様のように見えて、とても神秘的でした。エントリーした穴からは光が差し込んでとても綺麗だった。この風景は体験者でないと分からないものでしょう。
防寒対策を念入りに行ったので、前述の頬以外は全く寒さを感じませんでした。今回のために購入したドライフードとレンタルした5ミリのミットはとても有効でした。


流氷の下で

流氷ダイビング
しばらくしてダイブウォッチを見ると「BT」とバッテリーマークが出てしまって使用できなかったので、ゲージのダイブコンピューターを使用しました。ダイビング終了後しばらくしてからダイブウォッチを見ると直っていましたが、2本目は予備の腕時計型ダイブコンピューターを使用しました。結局、僕のダイブウォッチはマイナス水温には耐えられなかったようです。
また、機材の問題としては、1本目にインフレーターボタンが凍結して動かなくなりました。あまり深度を変えるダイビングではなかったし、ドライスーツでの浮力調節も可能だったので、大きな問題にはなりませんでしたが、アイスダイビングの恐ろしさが理解できました。同じグループの人には、呼吸が速くなったことでレギュレーターが凍結し、フリーフローして止まらなくなり、ダイビングを中止せざるを得なかった人もいました。彼はレンタルのレギュレーターに換えてダイビングすることができました。


クリオネ

クリオネ
今年はクリオネの当たり年ということで、クリオネを何匹も見ることができ、大感激だった。しかし、あまりにも小さな生き物(大きくても1.5cm程度)なので、撮影は困難を窮めました。特にマクロでピントを合わせるのが大変。クリオネがいる深度が、真水と塩水の混ざった層のすぐ下だったのも、撮影が難しかった理由のひとつです。
クリオネの他にも、クサイロモエビ、ゲンゲやウミグモなど、初めて見る生物や、北海道らしい水底一面のバフンウニや青いマヒトデなどを観察して、写真を撮ることができました。(写真はこちら)−1.7°の水温にいるとは思えないほど快適で楽しいダイビングだったので、1本目は32分、昼食後の2本目は42分も潜ってしまいました。


流氷に向かって

エキジット
ガイトさんの合図で潜水を終了し、光の差し込む穴に向けて浮上しました。水面に浮上して浮力を確保した後、両脇から2人に抱えてもらって、流氷の縁に上げてもらいます。これは障害者だけではなく、一般のダイバーも含めて、みんな同様に手伝ってもらっていました。
流氷の縁に座ると、気温の暖かさが感じられました。マスクとレギュレーターを外すと、急に唇に血液が回ったせいか、唇から血がほとばしるような感覚。最初はびっくりしましたが、すぐに治まり、もちろん出血もありませんでした。
もちろん、温かく感じたと言っても、気温は−5°〜−9°なので、すぐに濡れたフードとグローブを外して、露出部分を拭き、防寒用の手袋と帽子に着替えました。濡れたタオルは凍ってしまうので注意が必要です。手袋も防水のタイプがお奨めです。


エキジット

流氷ダイビングを終えて
一回潜れば充分という人もいるそうですが、自分としては、また来年も潜りたいと思いました。とても感動的な体験だったのはもちろん、準備や防寒対策を充分に行い、注意事項を守れば、危険なダイビングでもありませんでした。今回は浅場が中心だったので、違うポイントにも潜ってみたいし、今回教えてもらったけれど見つけることのできなかった(個人的にはクリオネよりも可愛いと感じる)ミジンウキマイマイとも流氷の下で遭遇してみたいと思いました。深場の流氷は、その形もおもしろいそうです。
これが、自分のオホーツク海での初ダイブになりましたが、流氷の時期だけでなく、夏も来てみたいと思いました。唯一北海道で潜ったことのある積丹半島の海もおもしろかったのが思い出されます。
最後に、今回の流氷ダイブを可能にしてくれたヴァレンタイン・キッズとイルカホテル、そして様々な場面で手伝ってくれた皆さんに感謝したいと思います。

それでは、また来年。「みんな!流氷行こうよ!!」