流氷ダイビング2004

流氷ダイビング2004

昨年、2003年2月22日に北海道・知床半島西側の町・宇登呂に行き、流氷ダイビングに初挑戦しました。流氷に潜った車椅子ダイバーは私が日本初ということで新聞にも記事が掲載されました。挑戦する前は一度潜るだけでいい、と考えていましたが、流氷の魅力に取り憑かれてしまったようです。今年も仲間を誘って宇登呂に流氷ダイビングに行ってきました。2004年の流氷ツアーの様子をレポートします。


女満別へ
 今回は6人のダイビング仲間と共に流氷ダイビングに出発です。羽田に集まりJASの便で女満別空港へ向かいます。まず最初に発生した問題は飛行機が沖止めだということ。それでも普通ならリフト車を使って飛行機に上がれます。しかし「他の予約がいっぱいでリフト車が手配できませんでした」と言うのです。羽田には3台のリフト車がありますが、いつも取り合いのようです。
 車に乗せられて飛行機に行ってみると、タラップではなくボーディング・ステーションでした。エスカレーターで2階に上がり、ボーディング・ブリッジを使って飛行機へ。アイルチェアーに乗り換えて席に着きます。前方の席にしてくれたので助かりました。しかし、飛行機に乗る前に地上職員の女性が「アナウンスはしていませんが、女満別は雪のため着陸できない場合があります。その場合は札幌に降りますがよろしいですか?」と聞かれました。よろしいも何も、選択肢はありません。ここまで来て飛行機に乗るのをやめる訳にもいきません。「流氷ダイビングなのに札幌には流氷ないよ。ダイビング機材はすべて宇登呂に送っているし」と話しながら飛行機に乗り込みました。

 朝、早かったので寝ていたら(1時間ほども寝てしまったのか)すぐに女満別上空。問題なく着陸できるようです。「あ〜よかった。」安心して着陸を待ちます。飛行機は小雪の女満別空港に到着。飛行機が遅れたのと、車椅子使用者は他の乗客が全て降りてから最後に案内されることから、時間がとても気になりました。昨年は女満別から網走までタクシーで行き、網走からホテルの観光バスで宇登呂に行きましたが、今回は網走駅から流氷観光列車のノロッコ号に乗って斜里駅まで行く予定なのです。空港を出るとタクシーに飛び乗り、網走駅に向かいます。
 運転手さんが話すには、今年は何十年ぶりの大雪が降ったり、接岸していた流氷が南風に乗って一晩で沖に流れてしまったり、と大変な年だそうです。「朝、斜里に行ったときは吹雪いてたよ」という情報も・・・ 確かに昨年とは全く異なり、2〜3mの雪が積もっています。ちょっと心配になりました。
女満別

網走駅
 網走駅に着くと、みんな急いで駅弁を買いました。ノロッコ号には社内にダルマストーブがあり、そこでスルメを焼いて熱燗やビールを飲んだり、駅弁を食べることができるのです。みんな、ウニやカニの豊富な網走らしい駅弁を買って乗り込みます。
 網走駅に入るには階段の横にスロープがありました。改札から1番ホームまではフラットなのですが、斜里行きのノロッコ号が入ってきたのは2番線。30段以上の階段を上がって下がらねばなりません。ツアー主催の齋藤さんは「大丈夫、ちゃんと車椅子で乗ることを連絡してあるから」と心強い言葉。駅員にもう一度告げて改札を通ります。階段の脇には車椅子階段昇降機が置いてありました。「これで行くのかな?」ところが、何分経っても駅員がやって来ません。やっと改札を入ってきてもノロノロしていて何も始めようとしません。もう乗客はみなノロッコ号に乗り込んでいます。階段昇降機の使い方が解らないのでしょうか?すると齋藤さんがキレて言いました。「もういいよ、2人で行こ!」車椅子を後ろ向きに階段に付けて引き上げ始めました。いつもやっている方法なので、僕もタイミングを合わせて車椅子を後ろ向きに漕ぎ、階段を上がっていきます。すると慌てた駅員が4人も走ってきました。「遅いよ!」この方法で上がっているとき、変な場所を持たれたり、変なタイミングで持ち上げられると、かえって大変なのです。ほとんど齋藤さんと僕の力だけで30段以上の階段を上がり、線路の上を渡って、また30段以上の階段を下がります。さすがの齋藤さんも汗だく。ありがとうございます!そして最後にノロッコ号の2段の段を上がって車内に乗り込みます。
飛行機 飛行場
左の階段が大変でした スルメは車内でも売っています

ノロッコ号
 ノロッコ号の車内には、窓に向いたベンチ式の席とテーブルをはさんで向かい合わせのベンチ席があります。ダルマストーブはテーブル席の間にありました。僕らはテーブル席の指定券を持っていたので席に向かいます。もう一段段差があったので押してもらって上がりましたが、窓向きのベンチ席とテーブル席の間の通路が狭くて車椅子が通れません。しかし最近東南アジアのバリアフルな旅行の多い私は、車椅子にトランジットホイールという小さい車輪を後輪の間に付けて来ていたので、後輪を外すことで65センチの幅から48センチ幅に小さくして、問題なく自分の席まで行くことができました。
 木製のベンチ席に予備のクッションを敷き、車椅子から乗り移ります。さぁ、カニ弁当食べるぞ!しかし、列車が揺れるのと座席にホールド性が全くないのでバランスがとれません。片手でしがみつきながら弁当を食べることになりました。でもそんな大変さも忘れるほど美味しいカニとイクラとウニ弁当でした。
 列車はオホーツク海に沿って走ります。しかし有名な北浜駅というオホーツク海に最も近い駅(海辺まで20m)まで来ても、海には流氷がまばらにしかないなのです。去年ば網走からずっと、海は見渡す限り水平線まで流氷だったのに・・・ ちょっと心配になります。しかし、列車が進むに連れて流氷の量は多くなってきました。去年と違うのは流氷の上に積もっている雪の量が多いことです。流氷の上の移動は大丈夫だろうか・・・ またまた心配になります。
 しかし、そんな心配も香ばしいスルメイカの焼ける臭いで吹っ飛びました。今回ご一緒したMさんご夫妻がスルメを焼いてくださっていたのです。みんなで焼きたてのスルメをいただきます。最高でした。そんなことをしているうちに列車は終点の斜里駅に到着です。ちょっと大変だったけど、絶対オススメのノロッコ号でした。自由席は超満員だったので、指定席をとっておいて正解でした。
ノロッコ車内 線路
北浜駅停車中に弁当をかき込みました そろそろ斜里駅に到着です

宇登呂へ
 斜里駅に着くと小雪が降っていて曇りの天気でしたが、吹雪は治まっていて安心しました。駅までホテルのバスが迎えに来ることになっていたので、近くの喫茶店で時間をつぶしました。古き良き時代の喫茶店という感じのお店で女性のマスターと意気投合して楽しい時間を過ごしました。時間が来て、喫茶店を出ます。お店の向かい側が停留所でした。今回も送迎バスは普通の観光バスだったので、2人に手伝ってもらって乗り込みます。
 左手に流氷、右手に雪山を見ながらバスは進みます。右手には時々エゾシカが現れました。流氷は昨年並みに水平線まで海を埋めています。しかし、ところどころに水たまりのような場所や雪が高く積もった場所もあり、明日の流氷ダイブがちょっと心配でした。
 ホテルに到着してチェックイン。去年と同じバリアフリールームがとれていたので、男性4人がその部屋に、女性3人が隣の部屋を使うことになりました。このホテルは80種類のバイキングというのが売り物で、刺身、タラバガニ、生ガキ、寿司、そして洋食からケーキ、アイスクリームまで、食べ放題。みんな満腹になるまでいただきました。食事を早い時間に済ますことができたので、去年は見に行かなかった「オーロラ・ファンタジー」を見学に行くことにしました。
知床斜里駅 流氷景色
知床斜里駅 今年の流氷には雪が積もっていました

オーロラ・ファンタジー
 オーロラ・ファンタジーとは、麦ワラをいぶした煙にレーザー光線を投映して、流氷の上の夜空に人工のオーロラを見せるショーのことです。また手伝ってもらって観光バスに乗り込んで流氷の近くまで行きます。そこから雪道を歩かなければならないのですが、会場までは、かなり遠く、雪道もデコボコでかなり大変でした。友人たちがかわるがわりに押してくれたので何とか会場に到着できました。アメリカだったら車椅子の人は近くまで車で行けるサービスがあるだろうに、と話していると、「車椅子の方はこちらへ」と呼ばれました。観客は丘の斜面に登って見ているので、車椅子の者は少し前方で見せてくれると言うのです。新雪の中を押してもらい、その指定席へ。仲間6人も一緒です。
 しばらくすると、流氷とオーロラ・ファンタジーの説明に続いて音楽のボリュームが上がり、オーロラ・ファンタジーが始まりました。最初は緑色のレーザー光線だけでしたが、だんだん赤や青などの色が加わり、オーロラのようになってきました。音楽の効果もあって、人工的なレーザー光線のショーではありますが、けっこう感動できるショーでした。しかし、感動に浸る暇もなく、人の流れに飲み込まれながら雪道をバスまで戻ります。ハンドリムには雪が積もり氷になっています。途中で甘酒のサービスなどもしていましたが、それどころではない、という感じ。雪の坂道を自分で漕いだり押してもらいながらバスに戻りました。手を貸してもらってバスに乗り込みホテルに帰ります。明日はいよいよ流氷ダイビングです。
記念写真 オーロラ・ファンタジー
記念写真 オーロラ・ファンタジー

流氷ダイブのブリーフィング 着替えた場所
 今年の流氷ダイブは旭川に拠点を持つ旭川ダイブハウスのツアーへの参加でした。朝8時に僕たちを担当してくれるインストラクターの西村さんがホテルに迎えに来てくれてブリーフィングをしました。7人のうち4人は流氷初トライでした。去年と違うポイントは、全員一緒ではなく、2人ずつインストラクターと一緒に潜るということ。潜水時間は15〜20分。ダイバーはロープを付け、流氷上に残るロープテンダーがロープを持ってシグナルを出したり受けたりすること。去年は、流氷のすぐ下にある氷が溶けてできた真水と塩水の混ざった層(ハロクライン)は速やかに通過するという注意と、機材やボタン等が凍らないように、エントリー前に機材を濡らさないという注意がありましたが、今年はあまり強調されませんでした。しかし去年同様、レギュレーターが凍らないように強く息をせず、自然でゆっくりとした呼吸を続ける。インフレーター等が凍らないように、過度に使用しない。強く息をしてレギュレーターがフリーフローすると止められないので、ダイビングを中止せねばならないという注意がありました。私に関しては、手で泳ぐので、からまらないようにロープは付けないことになりました。機材をハイエースに積み込み流氷ダイビングに出発です。

ボートへ ダイビング・サイトへ
 外に出ると晴天の空。心配していた天気も良くなり絶好の流氷ダイビング日よりです。ハイエースに乗り込んでポイントに向かいます。昨年は宇登呂の西端に潜りましたが、今年はオロンコ岩やオーロラ・ファンタジーの場所よりも北東(知床半島の先端寄り)のポイントです。ホテルから10分もかからずに海辺に到着。道路から車で雪道の坂を下って、車から降ります。今回のポイントには日本中から100名ほどのダイバーが集まっていました。車を降りた場所でみんなドライスーツに着替えてからポイントに歩いて行きます。
 私は車椅子から地面に敷いたビニールシートに降りてドライスーツに着替えました。今回はタイツの上にシャミスのズボンと冬山用の長靴下を履き、インナーの上にフリース、その上に汗をとるためのTシャツを着ました。カイロを背中に貼り、ドライに足を通しやすくするために、もう一枚靴下を履きました。ドライスーツに加えて、頭はドライフード、手はドライミトンです。

ポイントへ
 今年はダイバーが多いポイントなので、いくつかのグループごとに穴が決められて、その穴からエントリーするとになっています。僕らは自分たちだけの穴をもらったのでラッキーでした。さて、穴まで移動です。昨年は雪上車を使ったり車椅子を押してもらったりしましたが、今年は流氷が薄い箇所があるので雪上車は使えません。車椅子にはオフロード用のタイヤを付けてきたのですが、雪が積もっていて車椅子での移動も大変です。そこで機材を運ぶためのソリに乗って移動することになりました。旭川ダイブハウスのスタッフと友人たちがソリを引っ張ってくれて、100mほどの距離をポイントに移動します。しかし、ところどころ流氷が薄く、海水が浸み出ているところがありました。落ちるのではないかとドキドキしながら運ばれましたが、無事ポイントに到着。ダイビングの用意を始めました。
ショップ ショップ
ソリで移動 薄い流氷や穴もありました

器材のセットアップ
 流氷ダイビング用の穴は、去年よりも大きく、一辺が3mほどの三角形の穴でした。手前にソリをつけてもらい、車椅子には乗らずに、ソリから器材をセットすることにしました。BCをタンクに取り付け、BCのウェイトポケットに片側4kgずつウェイトを入れます。レギュレーターやオクトパス等を注意して取り付け、ベルトに6kgのウェイトを付けました。今回はスチールタンクですが、厚着していることとドライを膨らませることを考えて14kgプラス・アンクルウェイトにしました。腰のベルト用に2kgや1kgのウェイトが足りなかったので2.5kgを左右に1kgを後方に付けました。通常なら前側にウェイトがある方が安定するのですが、左右対称にウェイトをセットできなかったのでこのセットアップにしました。
 水中カメラは、今年はデジカメにしました。去年はクリオネにピントを合わせ易い焦点距離固定のMX10を使用しましたが、今年は流氷の景色を撮りたかったのでデジカメにしました。あまり大がかりなシステムにしたくなかったので、外付けストロボは使用しないことにしました。
記念写真 用意
自分たちの穴の前で記念写真 ドライ・ミトンをはめて最終準備

エントリー準備
 器材のセットも終わり、いよいよエントリーの準備です。今回は2人ずつインストラクターと一緒に潜るというスタイルなので、順番を決めることになりました。「一番は去年も潜っている経験者2人」ということになり、私と友人のEちゃんが最初に潜ることになりました。去年のことを思い出すと、エントリー前はドキドキで、かなり緊張していましたが、今年は全く緊張していません。これが経験というものでしょうか。
 ミトンをはめて、ソリを横に倒して流氷の上に転がり出ます。フィンを履き、フードをかぶります。プッシュアップして穴に移動し、足を水に入れます。ウェイトベルトをして、BCを装着し、ゲージやオクトパスの位置を調整。次にマスクを付けようとして、曇り止めをして水でゆすいだら凍ってしまったので、お湯で溶かしてもらって装着します。カメラをBCに取り付けて準備は整いました。
エントリー前 今年の装備
エントリー前 今年の装備

エントリー
 三角形の穴の二辺に手を付き、体重を支え、後ろからタンクを持ってもらいながら身体を水中に降ろしていきます。BCの浮力で水面に浮きながら器材の微調整をし、一緒に潜る西村さんに合図を送って潜降開始です。BCの空気を抜いていきます。しかし今回後方に付けた1kgのウェイトのせいで身体が後に倒れます。身体を起こしながら更に空気を抜きますが、うまく行きません。「いいや、力ずくで潜っちゃえ」私はヘッドファーストで潜降し始めました。普通の海ならよくやることです、しかし流氷の海ではとるべき方法ではありませんでした。大きく強くかいた右手がオクトパスに当たり、オクトパスを勢いよく動かしてしまいました。とたんにオクトパスがフリーフローです。押さえても下を向けてもフリーフローは止まりません。呼吸はあれほど気を付けていたのに・・・ しょうがないので浮上します。「あ〜あ1本目はこれで終わりか・・・」
 しかし水面で、齋藤さんと西村さんがフリーフローを止めることに成功。再度、潜降することができました。「あ〜よかった」でも過信が招いた不注意なので、自分に対する良い警告になりました。
2本目 2本目
エントリー 潜降

1本目
潜降して行くと、ハロクラインの層が去年よりも厚いようです。後で聞いてみると、このポイントの近くには幌別川が流れ込んでいるので真水が多くハロクラインが厚いということでした。昨年の1.5mに比べてサラダ油のようにもやもやしている層が3m以上もあります。水深は5〜6mなので、視界のクリアな海水は水底近くの2〜3mということになります。ここでは水底近くにいた方が良さそうです。とりあえず僕は着底してベルト類を締め直しました。今回は去年のように露出していた頬の痛みは気になりませんでした。今回も水温はマイナス1.5°と前回とほぼ同じ。これも慣れなのでしょうか。
 西村さんの後を付いて行って最初に見せてもらったのはクサイロモエビ。海草の中に見ることができました。今年は、周りでも流氷ダイビングをしている人が多いせいか透明度が良くありません。ちょっとがっかりでしたが、水中生物はたくさん見ることができ、その多くは初めて見るものでした。ハナジロガシ、エゾクサウオ、ベロ、ホッカイシマエビ、ウリクラゲなど。ヒダベリイソギンチャクも多くてカラフルに海底を彩っています。今回、初めて見て気に入った魚がベロでした。2本目にも見つけましたが、その時見た一般的な茶色のベロではなく、1本目に見た白、黒、グレーに擬態したベロはちょろちよろ泳ぐ姿格好が可愛くて気に入ってしまいました。もちろん定番のクリオネも見ることができましたが、デジカメではピントを合わせるのは至難の業でした。
ベロ クリオネ
初めて見つけたベロ 今年も見られたクリオネ(下にあるのは指)

 今回の目的のひとつだった、下から見上げた流氷の写真も撮ることができましたが、透明度が良くないことと厚いハロクラインで、なかなか思うように撮れませんでした。でも去年よりも厚い流氷が部分的に下向きに突きだしている様子は氷山の下のようで感動的。流氷の海は何度潜っても感動を与えてくれます。エントリーした穴から差し込む光もキレイでした。これ以外の写真はこちら
下から見る流氷 ポーズ
前回とは違う流氷の塊が見られました 記念写真

 21分で潜水を終了して浮上します。透明度は良くなかったけれど、とても満足した流氷ダイブの1本目でした。水面に浮上して浮力を確保した後、両脇から抱えてもらって、三角形の穴の角に上げてもらいます。これは障害者だけではなく、一般のダイバーも同様に手伝ってもらいます。

こんなことも
 最初の2人がダイビングを終え、次はMさんご夫妻のペアがエントリーしました。昨年ボラカイにご一緒した時に流氷ダイビングを誘ったのがきっかけなので、ちょっと責任を感じてました。しかし、お二人とも流氷を堪能して無事浮上。最後はダイビング仲間のSちゃんと、今回初参加のHさんのペア。西村さんに先導されて潜降して行きます。しかし、直ぐにSちゃんが西村さんと一緒に浮上して来ました。トラブル?!聞いてみると、潜降して息を吸おうとしたら全然空気が吸えないので、西村さんにエア切れのサインを出したそうです。しかし西村さんが見ると、Sちゃんの口からレギュレーターが外れていたのだそうです。寒さで口が麻痺してレギが外れたのに気が付かなかったのでしょう。西村さんは直ぐにパージボタンを押しながらレギをくわえさせ、事なきを得たのですが、念のため浮上したと言うことでした。経験もあり、パニックしないSちゃんなので水を飲まなかったのでしょうが、初心者だったら溺れていたかもしれません。西村さんの的確な対応にも感謝です。もう一度潜降して行ったSちゃんは、ダイビングの間ずっとレギを手で押さえていたそうです。
2組目 3組目
2組目 3組目

バーベキユー
 1本目のダイビングが終わると、昼食をとりに行きました。またソリの乗って引っ張ってもらって移動します。朝よりも流氷の薄いところや穴が増えてドキドキでした。またハイエースに乗り、山の上にある「しれとこ自然村」に向かいます。そこでバーベキューができるというのです。まずは宿舎に入りカニ汁をいただきます。飲むごとに寒い身体を暖めてくれるのが実感できました。次に、外に出てバーベキュー。まずはホタテを貝殻ごと焼き、バターと醤油をかけ、貝柱の周りにご飯を乗せたホタテ・バターご飯をスタッフが作ってくれました。初めての食べ方でしたが、本当に美味しかったです。喜んでいると、今度はタラバガニの足を焼き始めました。焼きガニがこんなに美味しいとは初めて知りました。その後、イカやアスパラなどをたらふく食べてみんな満腹、身体も暖まりました。
バーベキュー エゾシカ
ホタテ最高でした。 いたるところにエゾシカ

ポイントへ
 またハイエースに乗って山を下りてダイビング・サイトに向かいます。雪道の両側にエゾシカが出て来ていました。時にはオオワシも現れるそうです。ダイビングサイトに着いて車を降りると、空が曇ってきて寒くなっているのがわかりました。気温はマイナス5°と、流氷ダイビングとしては暖かいのですが、日が陰ってしまうと照り返しもないので、寒さを感じます。
 またソリに乗って移動を始めますが、ダイビング・ポイントまでの道が、高い気温と多くのダイバーが何度も歩くことで何カ所も穴が空き、海水が浸み出しています。そのような穴にはベニヤ板がかぶせてあるのですが、穴が大きく空いている場所ではベニヤ板自体が浮いてしまっているので、下に流氷の塊を入れてベニヤ板を浮かせます。その上をソリで通るのですが、ソリごと穴に落ちるのではないかとハラハラしていました。大きな穴や裂け目を避けて何度か迂回しながらやっと僕らの穴に到着しました。
移動1 移動2
薄い流氷を越えて 流氷の裂け目を越えて

2本目
 2本目も1本目と同じ順番で潜ることになりました。1本目のときに後に付けた1kgのウェイトがバランスを崩す原因になっていたので、今度は1キロ玉を外してベルトを付けました。1kg減らしても浮力は大丈夫だと判断したからです。フィンを履き、ドライ・フードをかぶり、ミトンを付けて穴に移動します。足を降ろし、ウェイトベルトをして、BCを装着し、カメラをBCに付けて準備完了です。水中に入って水面に浮き、記念写真を撮ってもらいました。一回潜って様子が分かったので、更にリラックスしていました。でも一回目の失敗があるので、慎重に潜降して行きます。今度はオクトパスが吹くこともなく、ハロクラインを通り越して海底へ到着です。
 海底で待っているとバディのEちゃんが来ません。しばらくして潜降してきましたが、後で聞いてみると、ディフレーターが凍ってBCの空気が抜けなくなって苦労していたそうです。バデイが揃ったのでダイビングを開始しました。
2本目用意 2本目エントリー
2本目用意 2本目の潜降前

2本目
2本目は1本目よりも透明度が良くなったようでした。しかし太陽が陰ってしまったので1本目よりも少し暗くなりました。魚は少し減ったようですが、それでもエゾクサウオやベロなど何種類かを写真に納めることができました。このダイブでは水底や岩肌のイソギンチャクが目に付きました。イソギンチャクはとても多くて、オレンジ、緑、茶色と何種類かいましたが、後で聞いてみると全てヒダベリイソギンチャクだということがわかりました。ウニも多く、種類もバフンウニなので食べたい衝動に駆られました。帰りに網走でお寿司を食べることになっているので、それまで我慢しましょう。
流氷 イソギンチャク
こんな風景も見られました ヒダベリイソギンチャク

 ダイビングも終わりに近づいたので西村さんにカメラを渡して、私を撮ってもらいました。本当は流氷のすぐそばでにいるところを撮って欲しかったのですが、ハロクラインが厚いのであきらめました。でも、撮ってもらった最後の1枚が、ハロクラインの中に消えていく自分の姿をとらえていて、とても面白い写真になりました。
ポーズ ポーズ
流氷の前でポーズ ハロクラインの中へ

 ダイビング後半はかなり寒くなってきました。今回レンタルしたミトンは写真を撮ることも考慮して人差し指が分かれたタイプでしたが、その人差し指が寒くなりました。時計を見るとすでに25分。潜水を終了して浮上します。2本目も満足のいく流氷ダイブでした。水面に浮上して浮力を確保した後、両脇から抱えて上げてもらって上がります。
 残りの二組がダイビングしている間、待ち時間が長いので車椅子に上がりましたが、どんどん寒さが厳しくなってきました。ロープテンダーの坂田さんがジャケットを貸してくれたのは感謝でした。熱いココアを飲んで身体を暖めます。日が陰るとこんなにも体感温度が違うものかと驚きました。全員がダイビングを終了するのを待ち、器材を片づけ、またソリに乗って車に戻ります。ホテルに帰ると、みんなお風呂に直行し、1〜2時間も温泉やサウナに入って身体を暖めました。私は、夕食では好きなビールではなく、普段飲まない熱燗をいただきました。これでやっと身体が暖まったようでした。

最終日
 流氷ダイビングも無事終わり、去年はそのまま帰途についたのですが、今回は遅い便がとれたので、朝早く起きて網走に行って流氷観光船のオーロラ号に乗ることにしたのです。旭川ダイブハウスの非常勤スタッフの坂田さんが車を運転して付き合ってくれることになりました。雪道に慣れた車の運転のおかげで、バスで行くよりもかなり短い時間で網走に到着しました。オーロラ号のターミナルを探し、到着です。待合室の入口と出口には何段かの段差がありましたが、手伝ってもらって船へ。もちろん船に乗り込むにも階段があります。しかしオーロラ号のスタッフはとても手際よく私を車椅子ごと階段を上げてくれました。車椅子のお客さんも多いのでしょうか?
 乗船すると、入口横のソファーの席に陣取りました。下の階は流氷に近いのでもっと迫力があるようですが、わざわざ階段を下りることはやめました。しばらくして出航です。流氷と砕氷船についての説明がスピーカーから流れます。流氷のほとんどない港から出て流氷に向かっていきます。前方にもう一台のオーロラ号が流氷を割って進んでいるのが見えました。流氷に突入すると衝撃がありました。特に大きな流氷に当たるときには、止まったり、船が傾くこともありました。
オーロラ号 乗船
オーロラ号(乗ったのは2階) ととても手際のいいスタッフでした

オーロラ号
 一回目の流氷の横断が終わり、いったん船は流氷のない海に出ましたが、しばらくすると二回目の流氷突入です。そろそろ船の横の甲板に出ていた観光客の数も減っただろうと、私も甲板に出てみることにしました。上がって下がる一段の段差を手伝ってもらって甲板に出ます。外はマイナスの気温と風でけっこう寒かったのですが、目の当たりに見る、船によって砕け散る流氷の光景は圧倒されるもので、寒さを忘れて見入ってしまいました。しかし、客観的に見ると、一般の人はこの流氷の下を潜ろうとは思わないだろうな、と思いました。両親が心配するはずです。しかし、網走で砕氷船に砕かれた流氷と観光客が上を歩いたりダイバーが穴を開けて潜る宇登呂の流氷は、まったく違うものに思われました。甲板で写真やデジカメのムービーを撮り、二回目の流氷の横断が終わりに近づいたころ船室に入ります。オーロラ号はもう一度流氷の中を走って網走の港に戻りました。流氷ダイビングとは違う流氷の光景を見ることができて、とても満足なオーロラ号でした。また、階段を降ろしてもらって下船します。
オーロラ号 記念写真
流氷の中を進むオーロラ号 オーロラ号の甲板で

網走観光
 まだたっぷり時間があるということで、有名な網走監獄に行くことにしました。網走監獄とは、旧網走刑務所の建物を文化財として保存公開すると共に、刑務所や北海道開拓について展示している博物館です。実際に使用されている刑務所は新築され、少し離れたところにある山の中腹に網走監獄はあります。ちょうどお昼になったので、去年も行った網走駅近くの回転寿司で昼食をとりました。前回感動した網走産のウニをはじめ、タラバガニ、マスノスケ、サーモン、イクラ、タコの卵、ホヤの塩辛、カニの外子と内子、クジラ等々、珍しいものも含めて北海道の寿司を楽しみました。店を出て土産物屋に寄り、網走監獄に向かいます。
網走監獄 懲罰房 ウニ
網走監獄(博物館) 懲罰房? 地物(左)と普通のウニ

 網走監獄の駐車場から建物までは階段か急な坂を上がらなければなりませんでしたが、身障者用のトイレがあるレストハウスまで車で上がることができたので、そこまで運転してもらって車を降り、坂を押してもらって入口へ。博物館である網走監獄は蝋人形も使って昔の監獄の様子を復元していました。こんなに寒いところにこんな格好で、というほど薄着の受刑者の蝋人形は、「生きて帰れない」と言われた旧網走刑務所を物語っていました。しかし、その受刑者たちが北海道の開拓に労働力を提供していたことも理解できました。博物館も興味深くて、裁判の様子から刑務所での暮らしまで、知らなかったことも多くて時間を忘れて見入ってしまうほどでした。一概に昔のスタイルがにいいとは言えないでしょうが、凶悪犯罪が多発・再発している最近の日本には、このような刑務所も必要なのではと考えてしまいました。
 網走監獄はスロープや身障者用トイレもあってバリアフリーになっていますが、山の中腹にあるため、建物から建物への移動がすべて坂となり、とても大変でした。更に今回は雪も積もっていたのでなおさらでした。押してくれた友人に感謝です。

流氷ダイビングを終えて
 昨年初めて挑戦して、大感動した流氷ダイビング。今回は二回目だったので、初めての時ほどの感動はありませんでしたが、新たな感動も多かった気がします。大自然の力によって創られる流氷は、今年、去年と全く違う姿を見せてくれました。その結果、一度目とは違う流氷ダイビングが楽しめました。主催のショップによっても流氷ダイビングのスタイルが異なることもわかりました。地元の人の話によると、一週間前には南風が吹いて、一晩で流氷がすべて沖に流されてしまったそうです。その時に来たダイバーは残念だったでしょう。実は今回のツアーは当初その週末に予定していたのですが、私の仕事の都合で一週間遅らせてもらったのです。結果OKということでしょうか?でも、一週間遅れたことで流氷が溶けるのは進んでいました。流氷ダイビングのタイミングは難しいようです。
 一回潜れば充分という人もいるそうですが、自分としては、また潜りたいと思って今年も来てしまいました。また来たいか?と聞かれれば「YES」と答えるでしょう。まだまだ違う流氷の表情があるようです。何とかカメラを工夫して完璧なクリオネの写真も撮りたいし、流氷の裏側の写真も納得が行くまで撮りたいです。
 3月12日、テレビのニュースで、溶け出した流氷が溶ける前にクレーンで取り出して流氷のPRのために全国に持って行って展示する、というニュースを伝えていました。「これが始まると流氷の季節も終わりですね」という女子アナウンサーのコメントに、何となく寂しさを覚える私でした。  最後に、今回のツアーを主催したヴァレンタインキッズとツアー主催の旭川ダイブハウス、特にガイドの西村さんとロープテンダーの坂田さん(観光でもお世話になりました)、そして様々な場面で手伝ってくれた皆さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。

感動すること間違いなしです。「みんな!流氷行こうよ!!」

流氷の海