海獣ダイビング2005
2003年、2004年と連続して北海道・知床半島の宇登呂に行って流氷ダイビングを楽しみました。そして2005年は積丹半島の先端にある幌武意に行き、野生のトドと潜るダイビングに挑戦してきました。氷点下、大雪、荒れる海。流氷よりもハードなコンディションの中で行った海獣ダイビングの様子をレポートします。
札幌へ | ||
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今回は6人のダイビング仲間が集まり、初めての海獣ダイビングに出発です。新しくなって1ヶ月の羽田空港第2ターミナルに集まり、まずはANAの便で札幌へ向かいます。流氷で女満別へ行くのとは違い大きなジャンボ機で、都市型の千歳空港に向かうので、気持ちも楽です。しかし2時間ほどで千歳空港に着陸すると、雪がかなり強いのが窓から確認できました。今回の最大の心配事は天候。天気予報では、移動日が雪、ダイビング初日が暴風雪、2日目も雪、そして最終日も雪なのです。過去の流氷ダイブではいつも天候に恵まれていたので、初めて天気の心配です。さらに今回はトドのポイントまでボートダイブ。海が荒れないことも祈るしかありません。天候と海がボートを出せる状態で、まず第一段階をクリア。その上でトドに遭遇できるかどうかは潜ってみるしかありません。天候の回復を祈りながら飛行機を降ります。 |
小樽へ | |
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空港からは全区間一律300円の、快速エアポートと呼ばれる電車を使って小樽に向かいます。空港の到着口を出てエレベーターを降り、案内に従って新千歳駅へ。切符を買って駅員に伝えると、エレベーターでホームに案内してくれました。ホームにはすでに電車が停まっており、折りたたみのスロープを乗り口にかけて乗り込みます。両側2席ずつのシートのうち車両の一番端の席が1席ずつになっていて車椅子が停められるスペースがありました。私はそこに車椅子を停め、仲間たちはとなりの席に座りました。 窓の外は雪。それもどんどん強くなっていきます。そんな雪の中、電車は恵庭、札幌、手稲などを通って70分ほどで小樽駅に到着しました。またスロープを使って下車。エスカレーターを使ってホームから改札に降ります。改札を出るとアクアキャットの西村さんが出迎えてくれました。ワンボックスの車に乗り込み積丹半島に向かいます。 |
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快速エアポートに乗車 | 小樽駅に到着 |
余別へ | ||
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小樽を出発して海沿いの道を西へ。余市から積丹半島を北東に上がって行きます。しばらくして、4年前に一度潜ったことのあるローソク岩というポイントに行ったときにボートが出た港を通り過ぎました。4年前のダイブは夏の終わりで、海がとても良かったのを覚えています。この時の良い印象がその後の流氷ダイブや今回のような北海道のダイビングに繋がったのでしょう。余市で食べたウニ丼も最高でした。やはりダイビングのポイントとしても知られる美国を通り過ぎ、海岸線を離れて車はさらに北上。雪は吹雪になり、積雪も高くなってきています。明日が心配です。 小樽を出て90分ほどで積丹半島先端の西側にある幌武意に到着。崖を漁港に降りて、今回お世話になるアクアキャット幌武意のショップに到着です。送った荷物を受け取ってまた車に。積丹岬から海沿いの道を通って余別の町にある「なごみの宿いい田」に到着。午後7時、羽田を出発してから6時間がたっていました。 |
久々の旅館 | |
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宿の開き戸を開けて中にはいると、ごく一般的な上がり框。車椅子のタイヤの雪を払って拭いて上に上がります。前に雰囲気のいい食堂。右に曲がって長い板敷きの廊下を進むと、左側に風呂や洗面所、右側と奥に宿泊する部屋がありました。予想はしていたものの、ドアを開けると畳の部屋。数年ぶりに床に敷いた布団で寝ることになりそうです。やはりこのような場所でバリアフリーを望むことは無理なのでしょう。その上ほとんどの宿は冬の間は閉めてしまうと聞きました。 その後、風呂や共同の洗面所をチェックしてみると、洗面所は問題なし。トイレの小用は問題なし。便房はドアの開口部が60cm。風呂場は男女分かれていて、各部屋に脱衣場と風呂場。脱衣場へは問題なく、風呂場へのドアの開口部は57cm。便房も風呂場も車椅子のサイズによっては使用可能でした。私の車椅子の幅は65cmなので、片側の車輪を外して補助輪を使えば使用可能でした。この宿、けっこうバリアフリーかもしれません。 食事の用意ができたとの知らせがあり、食堂へ。食堂にはテーブル席と土間の上に畳が敷かれた席がありましたが、食事の用意は一番奥の土間の席にされていました。車椅子から土間に降り、柱によっかかって座りました。席についてビックリしたのはその食事の豪華さと量の多さ。甘エビなどのお刺身から始まり、カレイの煮物、アワビの浜焼き、カジカの醤油漬け、茶碗蒸し、焼き魚もありました。まさに地物の海の幸三昧で満腹。幸せな気持ちで、久々の畳に敷いた布団で熟睡しました。 |
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久々に和室に宿泊 | 食べきれないほどの豪華な料理 |
初日の朝 | |
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初日は7時半朝食、8時にショップのピックアップという予定。朝起きるとまず天気が気になります。二重の窓を開けると積もった雪に日が差しています。しかし仲間のひとりが外に出て海を見に行くと、かなり荒れているとのこと。海に出られるのか、潜れるのか、心配です。 食事に行こうとしているとショップから電話があり、海が荒れていて船が出せないので様子を見るとのこと。ピックアップが9時半に変更になりました。ちょっとがっかりして食堂に行くと、昨晩同様のすごい朝食。時間があるのでゆっくり食事をすることにしました。和食も洋食もあるビュッフェスタイルですが、そんじょそこらの朝食バイキングとは違ってすべて手作りで美味しく、みんな大喜びでした。特にデザートの手作りプリンは美味しくて、みんな何度もお代わりしていました。 |
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朝食バイキングも豪華 | 荒れている海 |
幌武意へ | |
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9時半に西村さんが迎えに来てくれました。しかし海の状態は回復していないとのこと。船は出せないそうです。しかし話を聞いてみると湾の中なら潜れるというので、潜ることにしました。今回のメンバーでは7人中2人が冷水のダイビングが初めて。冷水だとインナーも増やしいているのでウェイトの量も変わります。その状態で荒れた海でのボートダイブだとストレスが増すので、慣れるためによいと考えたのです。 車に乗り込み幌武意に向かいます。昨晩は暗くて見えなかった海は青くてとてもキレイ。しかし荒れていてるのも分かります。いくつかり町も通りましたが人の姿はほとんど見えません。閉じている店も多いようです。海沿いの道をいくつものトンネルを抜け、積丹岬の脇を通って幌武意の町に着きました。 |
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きれいな海、だけど荒れてる | 幌武意へ |
アクアキャット | |
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幌武意の町を通り左折して細い道を上がっていくと、いきなり目の前に空と海が現れました。幌武意の漁港を臨む崖の上に出たのです。漁港の沖にマッカ岬が見えます。この岬の裏側にトドが来るらしいのです。崖の上から細い道を下って漁港に降ります。ここも冬なので人の姿がほとんどありません。漁港の向かい側にアクアキャットの建物が見え、到着です。アクアキャトはプールや充填施設も持った立派なショップ。車やダイビング・ボートに加えて除雪用のブルドーザーまで持っていたのにはビックリでした。さすが北海道。階段を手伝ってもらって2階のショップに上がります。 | |
幌武意の海 | アクアキャットの施設 |
ショップ | ||
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2階のショップに上がるために手伝ってもらい、階段を上がります。雪が積もっているのでいつもより大変でした。入り口の前でタイヤについた雪を落としてショップ内へ。明るい店内でまず目を引かれたのが海側の大きな窓。港と海、沖のマッカ岬までよく見渡せます。アクアキャット社長の鍵谷さんとインストラクターであり料理も作ってくれた梅森さんが出迎えてくれて挨拶を交わします。 暖かい飲み物などをいただいて、ちょっとくつろいだ後、港でのダイビングについて西村さんからブリーフィングがあり、みんなドライスーツを着るためにインナーやフリースなどに着替えました。そして1階の器材置き場に降りて器材セットアップし、ドライスーツに着替えて港に向かいます。 |
幌武意漁港でのダイビング | |
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鍵谷さんがブルドーザーで除雪をしてくれた港までの道を、グループのみんなは歩いて、私は器材を運ぶ車に乗せてもらって港に向かいます。港のスロープになっているところで器材をセットしてエントリーです。今回は港に車椅子を持ってこなかったので、スロープの水際まで運んでもらい、器材を装着して泳ぎ出します。水面でバックルやベルト類を調整していると鍵谷さんが手招きするのでついて行くと、港の左側の岸壁前の水中のロープや海草に生み付けられた魚の卵を見せてくれました。エントリー前にカモメがハタハタの卵を食べに来ると、カモメを追い払っていたのを思い出しました。初めて見るハタハタの卵を写真に納めました。そして他のメンバーがみんなエントリーしてきたので集合して潜行し、ダイビングを開始しました。 | |
水辺で待機 | エントリー |
1本目 | |
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荒れる外海と違って湾内はとても穏やかで、透明度も悪くなかったので快適でした。最近では「北海道=流氷」のイメージになっていたのですが、流氷の水温-2℃と比べると4℃は暖かく感じました。(他のメンバー、特に冷水初体験の人たちはそうでもなかったようです。)しかし、港の中なのであまり生物は多くなく、ガイドの西村さんは泳ぎ回って探してくれているようでした。そんな幌武意漁港で見たものは、アイカジカなど。40分ほどでダイビングを終了し、エントリーしたスロープからエキジットします。さすがに自ら出ると寒さを感じました。アクアキャットの人から「ドライフードやドライミトンを脱ぐと、もっと寒いので苦しくても外さないように。」との指示があったので、そのままの姿でショップに帰ります。 | |
ハタハタの卵 | アイカジカ |
アフターダイブ~雪合戦 | ||
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ショップに帰り、1階でドライを脱いで、また2階に上げてもらいます。ダイビングについて話していると、梅森さんが昼食の用意をしてくれました。冷えた身体には嬉しい豚汁とご飯。みんな喜んで食べました。食後においしいみかんを食べながら海の状況を見守りましたが、午後になっても状況は良くならなかったので、午後のダイビングは中止して宿に帰ることにしました。明日、潜れることに期待です。 まだ明るいうちに宿に帰ってきたということもあり、送ってくれた西村さんの車から降りると、宿には入らずに外で雪合戦をすることになりました。最初は冗談で言っていたのが、新雪の積もった海岸近くに行ってみると、ちょっとやる気になり、誰かが雪玉を投げたことをきっかけに雪合戦が始まりました。雪合戦なんていったい何年ぶりでしょう。みんな、大人になって初めてかもしれません。 いつの間にか2チームに分かれて雪玉を投げ合います。新雪は雪玉にしにくいので、雪の固まりを拾っては投げていました。そのうち雪の中への倒し合いになり、倒れた人の上に乗っかったり、みんな雪まみれでした。僕も車椅子の膝の上に人を座らせるような形で足を持って後に放り投げるという、後々「車椅子一本背負い」と命名されたワザで反撃しました。 みんなヘトヘトになるまで遊び、宿の周りを一週散歩してから宿に戻りました。「東京から来た人は元気だね」と宿の人にも感心されてしまいました。 |
夕飯パート2 | |
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それぞれお風呂に入ったり休んだりしていると夕食の時間になりました。食堂に行ってみると、今日は手前のテーブルに用意がしてありました。昨日は、一番奥の土間の上に畳が敷かれた席でしたが、僕が車椅子から降りるのが面倒だろうと、こちらのテーブルに席を作ってくれたそうです。この席は手前側の三辺が土間になっていて、奥の一辺は土間がないので車椅子のまま席についてテーブルがちょうどいい高さになっていました。とてもいいアイデアです。 この日の夕飯もすごい量でした。お刺身の盛り合わせ、焼いたホッケ丸一匹、茹でたカニも丸一匹、さらに煮魚、白子、酢の物、貝、ウニ、等々。その上、しばらくするとテーブル中央のいろりに鍋がかけられました。「ごっこ汁」という鍋にはごっこという魚の身と卵が入っており、とても身体が温まる料理でした。ゼリー状の部分もあるごっことは何という魚かを尋ねてみましたが「ごっこはごっこだよ。」という答で終わってしまいました。どんな魚なんだろう。 |
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なかなかいい工夫 | 豪華な夕食バート2 |
2日目の朝 | |
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またまた豪華な朝食を食べて、用意して待っていると、西村さんが迎えに来て「何とか潜れそうです」の言葉。みんな大喜びで車に乗り込みます。道路沿いの海を見ても、昨日よりは穏やかな感じがします。また幌武意の町から左折して山を登り、崖の上に出ます。幌武意の漁港と海、そしてその沖にマッカ岬が見えます。あの岬の裏側にトドがいるんだ。早く行きたい!はやる気持ちを抑えて車から降り、2階のショップへ。鍵谷さんが数日前に撮ったというトドのビデオを見せてもらい、トドについて説明を受けます。トドはオスの方が大きく、メスに比べると頭が大きいことで判別できるとのこと。今回は岬の先端付近にあるトド待ちポイントに潜ることになりました。トドを待ってといる間、他の魚に気をとられていると見逃すこともあるので気を付けるようにとのアドバイスもありました。 | |
ブリーフィング | 近くに見えて遠かったマッカ岬 |
出航用意 | |
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カメラの準備を終え、インナーとフリースに着替えて、カイロを貼って寒さ対策をしてドライスーツを着ます。昨日のダイビングでレンタルのドライミトンが合わなかったので購入した新品のドライミトンと自前のドライフードを装着して車に乗り込みます。2分ほどで昨日エントリーした場所に到着しました。今日は車椅子を持ってきたので車椅子に降り、みんなと一緒にボートの係留場所に向かいます。そこで器材とタンクの最終チェックを行い、器材をボートに下ろして準備完了です。ボートまで2mほどの高さがあったので、僕は車椅子から降りて堤防の縁に座り、ボート上の2人の肩を借りてボートに降りました。床に座ってウェイトベルトと三点セットを装着し、出航を待ちます。 | |
ボートの係留地点 | ボートへ |
海獣ダイビング | ||
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出航前にポイントが、トド待ちポイントから、もう少し岸よりの長谷川の根に変更になりました。岬の先端付近の波が高いという理由からでした。けっこう高い波の中を5分ほどでポイントに到着です。マッカ岬の先端にはトドが上陸することもあるそうですが、今回は見られませんでした。 まずは僕からエントリー。器材を付けずにバックロールで入って水面で器材装着という段取りで進めることになりました。ドボーンとエントリーし、器材を受け取って装着し、アンカーロープでみんなを待ちます。下を見ると海底が見えます。曇っているので少し暗いようですが透明度は悪くなさそうです。 みんなが集まり、潜降開始です。アンカーの下15mほどまで潜降し、マッカ岬先端のトド待ちポイントの方向に泳いでいきます。少し流れがあるのが判りましたが、問題なく進むことができました。数分で目的地点に到着し、全員水底に身をかがめた状態でトドを待ちます。トドの気を引くために西村さんが石で海底の石を叩いてカーンカーンと音を立てます。しばらく何も変化がなかったので、ちょっと飽きてきて海底の魚を探し始めたとき、鍵谷さんが指を指すのが判りました。見上げるとトドです。体長2.5mほどのメスのトドが現れて僕らの周りをグルグルと泳いでいます。「やったー!!トドに会えた!!」大喜びで写真を撮るのさえ忘れて見入ってしまいました。 |
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なんとかトドと判別可能? | トドの写真byアクアキャット | |
トドはとても優雅に両方の大きなヒレを巧みに使いながら僕らの周りを泳ぎ回ります。時々こちらを見たり、ヒレを使って身体を揺らしたり、遊んでくれと言っているかのようでした。しばらくするとトドは帰って行ってしまいましたが、また少しすると現れて、僕らの周りを泳ぎ回ります。今度は写真を撮るぞ、とシャッターを切りましたが、暗くてストロボがとどかないので真っ暗な写真しか撮れません。それならとストロボを切って撮ってみましたが、今度はシャッタースピードが長いのでぶれてしまいます。3度目に現れた時は、多少暗くても大丈夫なムービーを撮ろうとしましたが、トドが現れると焦ってムービーに設定ができません。しょうがない、まずは自分の目に焼き付けよう、とトドの動きを見つめ続けました。 | ||
卵を抱くホテイウオ | オニカジカ | |
トドを堪能した僕らはエントリー地点に向かって戻り、アンカーを少し過ぎたところで西村さんが穴の中に逆さまになって卵を抱くホテイウオを見せてくれました。メスが卵を産むとオスが卵を守るというホテイウオ。とても可愛い魚なのですが、なんとホテイウオこそがゴッコの正体でした。その日の朝、西村さんが教えてくれたのですが「僕らは可哀想でゴッコ汁は絶対食べられませんよ」の言葉。昨夜食べてしまった僕らは後悔の念でホテイウオの写真を撮りました。そんな時、後を振り返ると20mほどのところまでトドが来ています。びっくり!よく見ると首から上が大きいのでオスのようです。またまたトドが見られて大喜びでした。その後、オニカジカなどの魚を見た後、ボートに向かって浮上し、ボートに上がりました。水温に比べて気温が低いのはもちろんですが、風と雪が加わって、ボートの上の寒さは過去一番の厳しさでした。「苦しくてもフードやグローブは外さないように」という言いつけを守ってみんな耐えています。トドに会えた嬉しさのおかげで、なんとか寒さを我慢できたようです。 | ||
まるで南極?! | 笑顔だけど凍ってます |
アフターダイブ | |
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吹雪のように横殴りに強くなってきた雪の中、船は港に戻り、器材をすべて降ろしてから私も堤防に上げてもらい、タンクからBCを外して器材を片づけます。片づける器材の上や自分に雪が積もっていくのが分かるほどでした。鍵谷さんは、前日の午後遅くとその日の早朝にも潜ってトドを見たそうですが、今回が最も近くで、最も長い時間、トドが見られたと言っていました。ラッキーです。トドが見られたことを祝して鍵谷さんと今回のツアーを主催したヴレンタインキッズの齋藤さんと一緒に記念写真を撮りました。 | |
ショップに帰り、1階でドライを脱いで、また2階に上げてもらいます。みんなトドに会えたことで、その話で持ちきりです。昼食の時間になり、今日はジンギスカンとスープ。北海道に来たら食べたいと言っていたジンギスカンなのでみんな喜んで平らげました。食後に鍵谷さんが撮影した水中ビデオを観賞しました。ダイビング中には興奮して見逃してしまったトドの表情や上手に左右のヒレの使って泳いだり方向転換する様子などがじっくり見ることができました。 |
2本目~雪合戦 | |
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しばらく休んで、2本目の用意を始めます。1階に降りて器材をチェックし、ドライスーツ着替えて港に向かいます。港に着くと降り続く雪の中、器材をセットして船に下ろします。私自身もボートに下ろしてもらい、床に座ってウェイトベルトを付けフィンを履いて3点セットを付け、今度こそはトドの写真を撮るぞ、と気持ちも高ぶります。みんなの期待を乗せて出航した船は波の中を進みます。かなり波が高くなり揺られる船にみんなしがみつきました。マッカ岬までもう少しというところまで来た時、鍵谷さんが叫びました。「波が高すぎるので中止にします!」ちょっと唖然。伊豆の網代などで高い波にも慣れている僕らでしたが、船長の言うことは絶対です。ボートはUターンして港に引き返しました。堤防に上がり、また雪の中、器材を外します。ダイビング後と違って、使ってない器材を外すのはちょっとむなしい感じがしましたが、1本目に見られたんだからいいや、という気持ちに切り替えてショップに帰りました。 車でショップに着き、車椅子に降りるとみんなが歩いてきました。すると一人が雪玉を投げ、誰かが誰かの上に飛び乗ったのを機会に、また雪合戦が始まりました。潜れなかったのでヤケクソ? まぁ、ドライを着ていてで寒くないので雪合戦も悪くない、とみんな参戦して、連日の雪合戦です。そのうちにまた雪の中への倒し合いになり、倒れた人の上に乗っかったり、雪をかけ合ったりしてみんな雪まみれ。僕も「車椅子一本背負い」で人を投げ飛ばして反撃しました。 |
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雪合戦 | さらに雪合戦 |
アフターダイブ~小樽へ | |
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雪まみれになった雪をはらって、ショップに戻り、器材を片づけます。ドライも脱いで干しました。器材はアクアキャットから送ってもらうので送り状を書いてお願いします。その後、もう一度2階に上がって温かい飲み物をいただきました。するとアクアキャットのみなさんからトドを見ることができた記念としてTシャツがみんなに手渡されました。Tシャツには「Steller’s Sea Lion in Shakotan. I prove that you watched Steller’s Sea Lion under the Sea.(あなたが積丹の海中でトドを見たことを証明します)」と書かれ、鍵谷さんのサインがしてありました。「ワンサイズなので山崎君には小さいかも。ゴメンネ。」ということでしたがみんな大喜び。記念写真を撮りました。 アクアキャットの車で小樽まで送っていただけるということで、車に乗り込みます。幌武意では2本、海獣ダイブは1本だけとなってしまいましたが、トドが見られたのでみな満足した表情です。海沿いの道を車は小樽に向けて走ります。 |
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トドと潜った証明Tシャツでみんな満足 | もらえてよかった! |
小樽の夜 | |
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2時間ほどで車は小樽市内へ。駅の近くにあるオーセントホテルに到着しました。送ってくれた西村さんにお礼を言って、再会を誓い、ホテルにチェックインしました。ホテルはバリアフリールームのある部屋を予約しておいたので、3日ぶりのベッド、簡単に使えるトイレとお風呂がありがたかったです。 あまり休む時間もなく、夕食は食べに町に繰り出します。小樽に来たらお寿司が食べたかったのですが、ちょっと遅かったこともあり、ホテルで教えてもらった近くの居酒屋さんへ行きました。雪道から屋根のある商店街を通って店に到着。中に入ると、とてもいい感じのお店。その上、トドの剥製が出迎えたのにはびっくり。みんな記念写真を撮っていました。カウンターがいっぱいだったので、しょうがなく座敷の席へ。かべに寄りかかれる席に座って夕食スタート。まずはトドが見られたことを祝ってビールで乾杯。地物の刺身やルイベなど北海道っぽいものを満喫し、最後は変わり種のアイスクリーム3種を食べて終了。みんな満足してホテルに帰りました。 |
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お疲れさま | 居酒屋でトドと遭遇 |
最終日 | |
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最終日はちょっと観光しておみやげを買って東京に帰るという計画。あいにく、シーズンオフなので僕の行きたかった水族館は閉館中。荷物を持って移動するには南側の市場も遠いので、駅近くの市場に行くことにしました。朝食を済ませてチェックアウトして、駅の方へ向かいます。前の晩に通ったアーケードを抜けると雪が強くなっていました。だんだん自分に雪が積もってくるのが分かります。雪国の車椅子の人の気持ちがちょっとだけ分かった気がしました。雪道の坂を上がりきると通りの反対側に三角市場を発見。みんなでばらばらになって買い物に。市場の中が狭かったので、僕は市場の隣にある海産物屋に入りました。とてもいいおじさんがいて、カニの足をむいてくれたり、色々と試食させてくれたので、友人達はカニや海産物を買って宅配便で送っていました。最後におじさんが「カニと記念写真撮ってもいいよ」と言うので、おじさんも一緒に記念撮影。おみやげにイカスミ味のサキイカをもらって駅に向かいます。 | |
容赦なく降る雪 | とっても優しいおじさんでした |
小樽から札幌へ | |
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小樽駅の改札で駅員さんに、快速エアポートに乗って札幌に行くことを伝えて待っていると、駅員さんが来て誘導してくれました。エスカレーターには車椅子用に4段ほどの段が平らになって車椅子を乗せられる装置が付いていたので、それを利用してホームに上がりました。昨年の流氷イビングの時の網走駅で階段を担ぎ上げられたのと比べるとバリアフリー度が高くて楽でした。用意された簡易スロープを使って電車(快速エアポート)に乗り込み札幌を目指します。強い雪の中、海岸線を走って行く車窓から海を見ると「トドか?」と思うような黒い物体を発見。後で聞くとサーファーだということでした。びっくり!北海道はダイバーもサーファーも大変だなぁ。すごい根性。 | |
雪の小樽駅 | 小樽駅のエスカレーター |
札幌~千歳~羽田 | |
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30分ほどで電車は札幌駅へ。こちらではエレベーターを使って改札を出ます。今回、札幌を案内してくれることになったの福田さんが出迎えてくれました。荷物を駅のロッカーに預けて、タクシーで札幌ビール園へ。ジンギスカンを食べるのが目的です。とっても定番ですが、みんな満足していました。この後は、飛行機の時間までお土産を買うことにしました。みんなの希望をとって、までは場外市場へ。何人かがここで海産物の買い物をした後、またタクシーに乗って今度は札幌のデパ地下へ。デパ地下の海産物も侮れないのです。ここでも何人かが海産物や名産品を買いました。最後に札幌駅まで雪道を歩いて行くことにしたのですが、途中にあった雪印パーラーに寄ってアイスクリームを食べました。皇室の方も食べたというプレミアム・アイスクリームから巨大なパフェまで様々なデザートがありました。さすがにミルク製品は美味しく感じました。2階にあるパーラーにはエレベーターで上がることができました。 札幌駅に到着し、福田さんにお礼を言って別れ、また快速エアポートに乗り込みます。40分弱で新千歳空港駅に到着し、エレベーターで地下1階から2階の出発フロアーに上がってチェックイン。搭乗手続きを済ませて飛行機に乗り、1時間半のフライトで羽田に到着しました。今回、新しくなったばかりの羽田第2ターミナルを使用しましたが、駐車場の各フロアのエレベーターに近い場所に4~5台ずつの身障者用パーキングが設置されたのには嬉しかったです。おかげで今回も駐車スペースを利用することができ、とても便利でした。 |
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快速エアポートの車椅子席 | 札幌の場外市場 |
海獣ダイビングを終えて
2年前に初挑戦して大感動した流氷ダイビング。翌年の流氷ダイブは、慣れたこともあってリラックスして潜れ、充分に楽しむことができました。冬の北海道のダイビングにはまってしまった私は野生のトドと遭遇できるかもしれない海獣ダイビングのことを聞き、それはぜひ挑戦してみたいと言いだし、ヴァレンタインキッズの齋藤さんやアクアキャットの西村さんの協力を得て潜りに行くことができました。
しかしツアー期間中、北海道・積丹半島の天気予報は暴風雪。幌武意にたどり着けるのか、船は出るのか、潜れるのか、トドはいるのか、トドに会えるのか、といういくつもの心配をひとつずつクリアしながらのツアーとなりました。ダイビング初日に海が荒れて船が出航できなかったときは、こんな最果ての地まで来たのに・・・と思った時もありましたが、唯一潜れた1本のダイビングでトドと遭遇することができ、本当に感動でした。マンタと遭遇した時や、ジンベイザメと一緒に潜った時も感動でしたが、初めての哺乳類ということもあり、未だかってない感動を覚えました。2~3mもある大きなトドがとても優しい目でこちらを見ながら、何度も泳ぎ回ってくれたこと、ヒレを巧みに動かす動作、すべて頭に焼き付いています。
最悪の天候の中で潜ったこともトドとの遭遇の感動を高めてくれたようです。横殴りの雪、風、高い波、荒れる海でのボートダイブ。これと比べたら流氷ダイビングは快適なダイビング・コンデションだと言えます。もうどんな状況でも潜れる自信がつきました。しかし反対に、状況が悪いときにはダイビングを中止する判断についても学びました。そういう意味では自分を大きくしてくれた今回のダイビングでした。
過酷な状況の中でトドと潜り、雪合戦をしたり、大雪の小樽と札幌を歩きまくったことで東京に帰った私に変化が起こりました。周りの人々が寒がっているのに全く大丈夫なのです。寒さに麻痺したわけではないのですが、体が強くなったようです。年末にはひどい風邪をひいて、治った後も外に出ると震えていたのが嘘のようです。ベランダに出て乾布摩擦ができそうな気持ちです。思いがけず元気になれたことも嬉しかったです。
一回でいいと言う人が多い流氷ダイビングにはまった私ですが、海獣ダイビングにもはまりそうです。もう少し良いコンデションで潜れたら最高でしょう。今度はトドの写真もちゃんと撮りたいし、今回見られなかったダンゴウオも見たいです。きっと来年また行きたくなるでしょう。感動すること間違いなしです。「みんな!トドと潜りに行こうよ!!」
最後に、今回のツアーを主催したヴァレンタインキッズとアクアキャット、ガイドしてくれた西村さん、鍵屋さん、梅森さん(食事も美味しかったです)、そして様々な場面で手伝ってくれた皆さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。