私のもうひとつの大きな活動エリアは、バリアフリーとユニバーサルデザインの分野です。
このページでは、私のバリアフリーとユニバーサルデザインに関わる活動・経験・考えをお伝えして行きます。
私が佐賀県に企画提案して始まった日本初のパーキングパーミット制度についてもご紹介しています。
出会い:私が車いす使用者になったのは29年前の1979年。日本ではバリアフリーがまだ進んでいない時代でしたが、私が事故を負ってリハビリを受け、高校に復学して大学生活を送ったアメリカでは日本よりも一足先に障害者のためのバリアフリーの考えがスタートしていました。そして私が車でアメリカ大陸一周旅行を行った1981年には、アメリカ中どこのホテルに行っても車いすで泊まれる部屋が用意されていました。それは車いす用の客室ではなく、「All Accessible Room」=「誰にでも使える部屋」でした。一般の部屋に泊まるのが難しい人はだれでもどうぞ、という考えです。その当時は「共用」と呼んでいましたが、いま思い起こすと既にユニバーサルデザインが始まっていたのです。
日本へ:1985年、大学卒業後に帰国した日本のバリアフリーはまだ進んでおらず、歩道のスロープもなかったので、移動は大変でした。電車や公共交通機関を使うのも大変。階段を担ぎ上げられたこともありました。車で移動する際も、身障者用駐車場はとても少なく、身体障害者用車両の駐車禁止除外指定の標章を使って道路に駐車して何とか目的地に行っていました。身障者用トイレもとても少なく、あったとしても使用されていないので物置になっていることが多かったのを覚えています。
活動:そのような状況に憤りを感じることも多く、障害者や障害者関係者の集まりでお話しする機会をいただく度にアメリカのバリアフリーと共用について話したのを覚えています。そのような活動が認められたのか委員会のメンバーや自治体のお手伝いをするようになりました。
- 東京都教育委員会・東京都体育施設運営審議会委員(93~)・・・東京都の6スポーツ施設の運営とバリアフリー化
- 東京都教育委員会・武蔵野の森総合スポーツ施設・建築計画策定審議会委員(94年)・・・現在の味の素スタジアムの計画と建設
- 日本マリーナビーチ協会・人にやさしい海岸施設のあり方に関する調査研究委員会委員(96.5~12)
- 建設省 都市公園におけるバリアフリー調査検討委員会委員(97.10~98.5)
- 日本マリーナビーチ協会 海洋スポーツを活用した沿岸地域活性化推進調査検討委員会委員(99.12~2000.5)
- 岩手県盛岡市 盛岡駅周辺地区道路交通環境改善基本計画策定懇話会委員(2000.12~2001.3)
- 静岡県 しずおかユニバーサルデザイン専門委員(2000.6~2002.3)
- 国土交通省 利根川上流ユニバーサルデザイン指針検討委員会委員(2004.2~11)
- 静岡県 都市公園懇話会委員(2000.1~)
- (財)2007年ユニバーサル技能五輪国際大会日本組織委員会ユニバーサル監修専門プロデューサー(2005.10~)
- 佐賀県ユニバーサルデザイン化推進委員会 特別委員(2005.7~)
- 佐賀ユニバーサルデザイン推進会議アドバイザー(2006.5~)
- 東京都 スポーツ振興審議会委員(2000.4~2014.3)
- 佐賀県在宅生活サポートセンター建築企画委員会委員(2013.6~)
- 唐津城天守閣展示改修実施設計業務委託プロポーザル選定定員会委員(2015.6~2016.2)
- 唐津城天守閣展示改修実施設計業務委託プロポーザル選定定員会委員(2015.6~2016.2)
- 内閣官房・ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会 構成員 (有識者)(2016.4~)
上記委員としての活動の他に、20数年に渡って多くの場所で講演や講義をさせていただいてきました。日本のバリアフリーの向上、そしてユニバーサルデザイン化に私の活動が少しでも寄与できていれば嬉しい限りです。まだまだ活動を進めていく必要がありますが、最近の活動の中で最も成功したパーキングパーミット制度について以下に紹介します。
日本初パーキングパーミット制度スタート(2006年7月29日)
私が佐賀県ユニバーサルデザイン化推進委員会の特別委員として佐賀県のUD推進指針の作成をお手伝いした後、古川知事から、佐賀県のUDの目玉となるようなことを考えてほしいとのご依頼をいただきました。そこで私が提出したのが「パーキングパーミット制度の導入」という企画書でした。パーキングパーミットとはアメリカやカナダをはじめ多くの外国の国々で採用されている身体障害者駐車場に駐車するための許可証(パーミット)の制度です。
身障者用駐車場の違法駐車は車椅子使用者にとって大問題です。心ない人達の違法駐車はもとより、市販の車椅子マークを車に貼って健常者が違法駐車する事件さえ頻発しています。しかし今まで根本的な解決策は考えられませんでした。私は問題の根源は、身障者用駐車場に駐車するための基準がないことだと考えました。欧米にはパーキングパーミットと呼ばれる駐車許可証があって、身障者ドライバーはこの許可証を提示することで身障者パーキングに駐車することができます。反対に身障者ドライバーでも許可証の提示がなければ違法駐車と見なされてレッカーされることさえあります。これは義務と権利をベースとした考え方で、これがあるからこそ身障者用パーキングが上手く運営され、数もどんどん増えているのです。
私はこのパーキングパーミット制度の日本への導入を長年訴えてきました。そしてユニバーサルデザインの導入をお手伝いしていた佐賀県で2006年3月に完成した佐賀県UD推進指針の中でパーキングパーミット制度の導入を提案しました。その後、古川知事のご依頼を受け、知事の絶大なる支持を受け、県庁の方達と検討を重ねた結果、日本で初めてのパーキングパーミット制度が完成し、導入が決定しました。
佐賀県のパーキングパーミットは米国の制度を参考にして、身障者だけではなく高齢者や一時的障害者(怪我人や妊婦)にも一定期間パーミットを提供するユニバーサルな制度になっています。民間施設(店舗、ホテル、銀行、郵便局、結婚式場等)はいずれも協力的、特に大手スーパーやショッピングセンターは施設管理上一番悩ましい問題だったことから、非常に協力的でした。
そして2006年7月7日の古川知事の定例記者会見で佐賀県のパーキングパーミット制度の導入が発表され、7月29日に遂にスタートしました。私にとっても長年の夢が叶って嬉しい限りですが、これはまだ入口の段階。この制度が日本中に波及して拡がることが最終的な目標です。身障者をはじめ歩行に問題のある方が駐車場の問題から解放され、いつでも快適に駐車できるようになることでアクティブに外出する方が増えたら日本の社会自体も元気になるのではないでしょうか。そうなったら嬉しい限りです。
パーキングパーミットについての詳しい情報は、佐賀県のUDのページ「パーキングパーミット制度」をご覧ください。
古川知事の記者会見はこちらで動画配信されています。古川知事のホームページではパーキングパーミットと私のことを書いていただいています。「週間yasushi」から「2006年7月」をクリックして「7月11日」に進んでください。
パーキングパーミット普及情報(2022年3月1日現在41県2市)
2006年7月7日に佐賀県でスタートしてから約1年後、2007年6月15日に日本で二県目のパーキングパーミット制度が山形県でスタート。そして8月1日には長崎県でパーキング・パーミット制度がスタートしました。とても嬉しいニュースです。佐賀県の隣の県である長崎県でスタートしたことで面としての広がりが出てきました。現在福岡県でも制度の導入を検討中とのことですが、福岡と北九州という二つの政令指定都市との調整にてこずっているようです。しかし福岡県で導入されれば九州の北側が網羅されるので、パーミット使用者の相互利用が現実的になります。
そして2008年1月31日、熊本県でパーキングパーミット制度がスタートしました。一日でも早く残りの大分・宮崎・鹿児島でも制度をスタートさせて九州の身障者をはじめとする歩行に障害のあるドライバーが安心して移動して駐車できる環境を作りたいと願っています。大分・宮崎・鹿児島の各県の関係者の方々、ぜひよろしくお願いいたします。必要でしたらいつでもお手伝いする所存です。
九州以外では、2007年6月にスタートした山形県に加え、2007年10月30日に福井県でハートフル専用パーキング(身体障害者等用駐車場)利用証制度がスタートしました。名称は異なりますが内容はパーキングパーミットと同様です。
2008年2月1日には茨城県の神栖市で「市」限定の制度がスタートしました。政令指定都市との交渉が難航している件もありますが、市の単位での導入も可能なことを見せていただきました。同年9月1日にスタートした栃木県の「おもいやり駐車スペースつぎつぎ事業」、12月12日にスタートした島根県の「思いやり駐車場制度」もパーキングパーミット制度の考えを取り入れた制度です。
2009年7月1日には徳島県で身体障害者等用駐車場利用証(パーキングパーミット)制度が、11月1日には鹿児島県で「身障者用駐車場利用証制度(パーキングパーミット制度)」がスタートしました。鹿児島の制度には私もアドバイスさせていただきました。同じく7月1日には福島県で8月3日には群馬県で「おもいやり駐車場利用制度」がスタート。さらに10月1日には鳥取県で「ハートフル駐車場利用証制度」がスタート。12月には山口県萩市で「おもいやり駐車場利用証制度」がスタートしました。
2010年には、4月に岩手県で「ひとにやさしい駐車場利用証制度(パーキングパーミット制度)」が、埼玉県川口市では「おもいやり駐車場制度」が、7月には愛媛県でパーキングパーミット制度が、8月には山口県で「やまぐち障害者等専用駐車場利用証制度」が、12月1日には岡山県で「ほっとパーキングおかやま」駐車場利用証制度がスタートしました。(※萩市の制度は山口市に統合されました。)
2011年に入って、2月1日から高知県で「こうちあったかパーキング制度」が、5月20日から香川県で「かがわ思いやり駐車場制度」がスタート。これで四国4県は全県導入となりました。7月1日から広島県で「広島県思いやり駐車場利用証交付制度」が、9月1日から京都府で「京都おもいやり駐車場利用証制度」がスタートしました。京都府は近畿圏初の導入となりました。さらに10月1日から茨城県で「いばらき身障者等用駐車場利用証制度」がスタートしました。既に3年前からスタートしている同県神栖市の利用証は県内全域で利用可能になりました。同じく10月1日から埼玉県の久喜市で「おもいやり駐車場制度」がスタート。埼玉県では2市目です。2011年最後は大分県。12月20日から「大分あったか・はーと駐車場利用証制度」がスタート。
2012年には、1月15日に新潟県、2月1日に宮崎県で「おもいやり駐車場制度」が、2月15日に福岡県で「ふくおか・まごころ駐車場」制度がスタート。ついに九州地方は全県導入となりました。さらに4月1日から兵庫県で「兵庫ゆずりあい駐車場」制度が、10月1日から三重県で「三重おもいやり駐車場利用証」制度が、11月から山梨県で「やまなし思いやりパーキング制度」がスタート。
2013年には、2月1日から静岡県で「静岡県ゆずりあい駐車場制度」、5月1日から滋賀県で「滋賀県車いす使用者等用駐車場利用証制度」がスタート。
2014年には、2月1日から大阪府で「大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度」がスタート。
2015年には、11月2日から石川県で「いしかわ支え合い駐車場制度」がスタートしました。
2016年には、1月1日から奈良県で「奈良県おもいやり駐車場制度」が、1月25日から和歌山県で「和歌山県障害者等用駐車区画利用証制度」がスタート。これで近畿地方は全県導入となりました。さらに4月20日から長野県で「信州パーキング・パーミット(障がい者等用駐車場利用証)制度」が、10月3日から秋田県で「障害者等用駐車区画利用制度」がスタートしました。
2018年には、9月3日から宮城県で「宮城県ゆずりあい駐車場利用制度」がスタート。これで東北6県がすべてパーキングバーミット導入となりました。
令和に入ると元年(2019年)11月15日から岐阜県で「ぎふ清流おもいやり駐車場利用証制度」がスタート。中部地方も全県導入となりました。
令和2年(2020年)4月1日からは富山県で「富山県ゆずりあいパーキング利用証制度」がスタート。北陸地方も全県導入となりました。
令和3年(2021年)7月1日からは千葉県で「ちば障害者等用駐車区画利用証制度」がスタート。東京都に隣接する県の導入は嬉しい限りです。
そして令和4年(2021年)7月1日からは沖縄県で「沖縄県ちゅらパーキング利用証制度」がスタートします。大人気の観光県での導入は相互利用の府県の身障ドライバーにとって嬉しいニュースです。
制度の名称に違いはあっても、駐車する特別なスペースが本当に必要な人のためにスペースを確保しておくための統一ルールが必要だということが理解され、2006年7月29日に佐賀でスタートしてから9年半で34府県2市に拡がりました。
佐賀県には制度の導入直後から日本中の自治体・県会議員そして障害者団体から問合せが殺到しました。パーキングパーミット制度への関心の高さ、そして制度が確実に広がっていくことを実感しています。パーキングパーミットが全国に広がり、実施県での相互利用がさらに広がって、最終的には日本全国でパーキングパーミットが相互利用できるようになることを願っています。
パーキングパーミットについての詳しい情報は、佐賀県のUDのページ「パーキングパーミット制度」をご覧ください。
パーキングパーミットの相互利用(2024年3月31日)
2009年6月1日、身障者用駐車場の適正な利用を推進し、利用者の利便性の向上を図るために佐賀県,長崎県,熊本県は利用証の相互利用協定を締結することになりました。 詳しい情報は、佐賀県のプレスリリースをご覧ください。
2009年11月1日には、鹿児島県の制度導入を契機として、既に利用証の相互利用を実施してきた九州3県(佐賀県,長崎県,熊本県)に加えて、鹿児島県の協力施設でも使えるようになりました。
2010年7月26日には「制度の広域的な運用による身障者用駐車場の適正利用の促進と利用者の利便性の向上」のため、中国地方の2県(島根県,鳥取県)と九州地方の4県(佐賀県,長崎県,熊本県,鹿児島県)、計6県の間で各県が交付した利用証による各県協力施設での相互利用がスタート。2010年12月1日には、岡山県が加入。
その後、四国4県(徳島県,香川県,愛媛県,高知県)と中国地方4県(鳥取県,島根県,岡山県,山口県)の間で相互利用がスタート。九州は制度導入の4県(佐賀,長崎,熊本,鹿児島県)の間で相互利用を進めていますが、九州と中四国間での相互利用はペンディングになっています。
2012年2月15日に福岡県で制度が導入されるのに伴い、2月15日より、山口県,福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県,宮崎県,鹿児島県で8県間利用可能な利用証(パーキングパーミット)の相互利用を開始しました。これにより、8県すべての制度協力施設で利用証の利用が可能となりました。
2012年4月1日、全国26の制度導入府県における相互利用が開始しました。全国で同様の制度を実施している東北・関東・近畿・中国・四国・九州の26府県の協力施設で利用証が相互利用できるようになりました。
【相互利用が可能な26府県】
岩手県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、福井県、京都府、兵庫県、島根県、鳥取県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
2012年10月1日から上記に鳥取県を加えた全国27府県の協力施設で利用証が相互利用できるようになりました。
2012年12月1日から上記に山梨県を加えた全国28府県の協力施設で利用証が相互利用できるようになりました。
2013年2月1日から上記に静岡県を加えた全国29府県の協力施設で利用証が相互利用できるようになりました。
2013年5月1日から上記に滋賀県を加えた全国30府県の協力施設で利用証が相互利用できるようになりました。
2014年2月1日から上記に大阪府を加えた全国31府県の協力施設で利用証が相互利用できるようになりました。
2014年2月1日現在、全国31府県の協力施設で利用証が相互利用できます。
【相互利用が可能な31府県】
岩手県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、福井県、山梨県、静岡県、三重県、滋賀県、大阪府、京都府、兵庫県、島根県、鳥取県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
2020年4月1日現在、以下の8県1市が加わり上記全国39府県1市の協力施設で利用証が相互利用できます。
宮城県、秋田県、富山県、石川県、長野県、岐阜県、奈良県、和歌山県、埼玉県川口市
この相互利用協定の締結はパーキングパーミットの全国展開への新たな一歩だと考え、高く評価しています。2020東京オリンピックパラリンピック競技大会までには欧米の国々のように国全域で相互利用ができ、国と国の間でも相互利用できるような環境ができることを願って活動していきます。
国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰(2012年1月17日)
第5回国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰に佐賀県の「パーキングパーミット」が選ばれ、2012年1月17日国土交通省で開催された式典で古川知事が受賞されました。受賞式典の知事のプレゼンテーションの最後にパーキングパーミット制度の企画・提案者として私も短いスピーチをさせていただき、パーキングパーミット制度の理念と取り組み、そして今後の展望について話しました。国交省にもパーキングパーミットが認められて嬉しい限りです。これで全国展開に弾みがつくことを願っています。式典の様子等は、こちらのページをご覧ください。