2002年のメッセージと活動

ATAC2002

「2002年12月6~8日」
今年も京都でATAC2002が開催されました。HCR同様、ATACも毎年拡大していくようです。AT(支援技術)とAAC(コミュニケーション技術)に対する関心が高まるのはとても良いことだと思います。これらの技術により、重度な障害を持つ方達の社会参加、就学、就業や職場復帰の可能性が高まるのは欧米の歴史を見ても明らかです。
今回もいくつかのセミナーを開催しましたが、新しい試みとして、AT(障害者支援技術)をトータルで考え、シーティングによる正しい姿勢の提供からコンピューターやコミュニケーション機器の使用に関する機能性を向上を目指すというテーマでセミナーを開催しました。日本でのATは電子的なイメージがありますが、欧米でのATは車椅子やシーティングを含めた全ての支援技術なのです。このセミナーには、私たちが5月の総合セミナーで出会ってからお手伝いしている、佐野アスカちゃんという脳性麻痺の少女にステージに上がってもらい、デモンストレーションをしていただきました。
アスカちゃんはシーティングにより変形の進行を止め、正しい姿勢をとれるようになったでけでなく、疲れにくくなったことで離床時間が延び、AT機器を使うために頭で押して使用するスイッチが、とても上手く使用できるようになりました。また、スイッチを使っていても姿勢が崩れなくなったことで、自在にスキャニングができるようになりました。今回のステージでも、ひとつのミスもなくデモンストレーションを行い、舞台度胸の良さも見せてくれました。
左の写真はシーティング前のアスカちゃん、右の写真は、セミナー後のアスカちゃんとお母さん、そして学校の先生と私です。

米国障害者ダイビング・インストラクター・トレーニング

<2002年10月26~27日>
10月の4週にラスベガスで開催されたDEMAショーに付随してAdaptive Scuba Diving Assoication (ASA) の障害者向けダイビング・プログラムを教えるインストラクターを養成する講習会が開催されました。インストラクター・トレーナーは、Cody’s Great SCUBA Adventureのチーフ・インストラクターでもあるStacey Minton。今回の参加は、Staceyの手伝いと、実演、そして日本から参加したヴァレンタイン・キッズの斎藤さんの通訳です。土日の2日間を使って、午前中は学科講習。午後はプール実習が行われ、プール講習後また夕方に学科講習が行われました。今回はカリフォルニア、ニューヨーク、そして地元ネバダ州からインストラクターが参加。2日間の講習の後は、障害者にダイビングを教える資格を取得して各地へ戻って行きました。障害者を教えることのできるインストラクターや受け入れるショップが増えるのは大賛成。これからも協力していきたいです。
ASAの障害者向けダイビング・プログラムは、北米のSSIを中心として拡がっており、日本でもSSIが進めていく予定。私も今後SSIをお手伝いするケースも多くなるので、SSIダイブ・コントロール・スペシャリスト(アシスタント・インストラクター)の資格の取得を目指して、クロスオーバーコースを開始しました。

国際福祉機器展・HCR2002

<2002年9月10~12日>
今年もHCRが東京ビッグサイトで開催されました。毎年拡大していくようですが、相変わらず週末の開催は実現していません。海外の福祉機器展のように週末に開催して、働く障害者が会社を休まなくても参加できるようになって欲しいと切に願います。
写真は、取引先の担当者達との記念撮影。取引先には、実際に障害を持った担当者が多いのが分かります。前列左から、イージースタンドのマーク、私、Tiスポーツのマーティ、スピナジィのジョッシュ。マーティは「Sports’n Spokes」に連載もしている伝説的なアスリート。マークはマウンテンバイクのダウンヒル等、様々なスポーツに挑戦している、これまた有名人。ジョッシュは元オートバイ・レーサー。頸随損傷者だが、世界中を飛び回ってスピナジィを広めています。彼らに加えてクイッキーの創立者であるマリリン・ハミルトンさんも来日。全米で最も著名な車椅子使用者で、世界の車椅子の歴史を変えた彼女の車椅子は、スミソニアン博物館に展示されています。ADA法の施行に尽力した一人でもあります。このようなロールモデル達に刺激を受けながら仕事ができて、私はとても幸せだと思います。ちなみに写真の後列は、ボティポイントのエリサ、通訳さん、イージースタントのトッド、リーボのトーマス。

Cody’s Great Scuba Adventure

<2002年8月8~12日>
有名なNASCARのレースカー・ドライバー、Al Unser Jr.の娘、Cody Unserが主宰する財団First Step Foundation主催のダイビング・イベントがカリブ海のグランド・ケイマン島で開催されました。スペシャル・ゲストとして招かれた私は、夏休みを利用して参加してきました。
コーディは、小学6年生の時に横断性脊髄炎にかかって胸から下が麻痺。しかしリハビリ終了後学校に復帰、成績優秀な現役高校生でありながら、両親と共に財団を作って横断性脊髄炎をはじめとする脊髄関連の障害の治癒と障害者の自立そして積極的な社会参加のために様々な活動をしている全米で最も有名な車椅子の女の子です。
受傷後にスクーバ・ダイビングと出会ったコーディは、講習を受けてオープンウォーター・ダイバーとして認定され、自らダイビングを楽しむだけではなく、その楽しみを分かち合いたいと、彼女のインストラクターであるStacey Mintonと共に今回のイベントを始めたのです。
まず、彼女の財団の関わる全米の病院や研究機関を通じてダイビングを始めたい11人の障害者が選出されました。各自、地元のSSIダイブ・ショップにて、学科講習とプール講習を終え、グランド・ケイマン島に集まります。そして初めての海洋講習をカリブのトロピカルの海で行おうというものなのです。各障害者は、1名のバディを選んで一緒に講習を受け、このイベント終了後も自由にダイビングが楽しめるように企画されています。
参加者は、ボストン、ニューヨーク、カリフォルニア、アリゾナなど全米から集まった、脊損、頸損、二分脊椎、横断性脊髄炎などの障害を持つ様々なレベルの障害者。しかし参加者は地元で講習を受けてきただけあって、ホテル前のビーチでの初ダイブも無難にこなし、すぐにカリブの海を楽しんでいました。翌日には初のボートダイブ。このプログラムが自立したダイバーの育成を目指しているだけ合って、2ダイブ目に潜った有名な沈船のポイントでは、みんな自由に泳ぎ回って本当に楽しんでいるのが分かりました。3日目には有名なスティングレイ・シティというエイの餌付けポイントに。餌付けの大好きなアメリカ人だけあって、エサとなるイカの足を握って動かしてエイを踊らせ、長時間楽しんでいました。
最終日の夜にはアワード・ディナー。ちょっと正装してバンケット・ルームに集まり、食事、スピーチ、ダンスを楽しみました。最後に各参加者とパートナーが担当のインストラクターと共に一組ずつ呼ばれ、Cカードが授与されました。何から何まで楽しいイベントでしたが、単に楽しいだけではなく、講習や教育がしっかりとされていて学ぶことがたいへん多く、とても有意義な5日間でした。イベントやプログラムの運営方法にも見習う点がたくさんあり、これからの日本での活動に役立てて行きたいと思います。そして、次回は日本からもぜひ参加者を連れて参加したいと願います。(写真は、前列中央がコーディ。右から2人目が私。)

総合セミナー2002

<2002年1月12~7月28日>
今年1月の東京をかわきりに、大阪、仙台、高知、新潟、と開催してきた総合セミナーが7月28日に福岡県大野城市で開催され、全セミナー合計で、43都道府県から603名の方々に参加いただき、大成功のうちに終了いたしました。参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
総合セミナーとは、24時間姿勢管理の考えに基づいて、シーティングを中心に、就寝時の姿勢保持であるスリーピングと、立つことのできない障害の方を立たせることの効果に関するスタンディングを統合したもので、全セミナーとも1日コースで開催されました。朝から夕方まで6時間の長丁場だったのにも係わらず、参加者の方々はみなさん熱心に最後まで聴講してくださいました。重ねてお礼を申し上げます。
来年は、総合セミナーに加えて、アメリカからシーティング・スペシャリストの先生を招いてアドバンス(上級)セミナーの開催を1月に予定しています。 (写真は高知でのセミナーの様子)

 

アシスティブ・テクノロジー講習会2002

<2002年6月25~6月28日>
アシスティブ・テクノロジー (障害者支援技術) の勉強のため、ワシントン大学で開催された4日間の短期集中コースに参加してきました。場所は大学のメディカルセンターの隣にあるCHDD (Center on Human Development and Disability) 。このセンターでは子供の発達障害から知的障害者、精神的な問題まで、家族も含めてカウンセリングを行っており、メディカルセンターのPT、OTとも協力して、ありとあらゆるケースに対応していました。参加者には、DVR (Division of Vocational Rehabilitation) と呼ばれる職業訓練やリハビリを行う州の組織のカウンセラーが最も多く、次いでOT、そして学校の教師でした。全盲の女性と聴覚障害で聴導犬を連れた学校の先生もいました。
日本では、アシスティブ・テクノロジー (AT) と言うと、障害者を支援するコンピューター、意思伝達装置そして環境制御装置などを表しますが、欧米で使われるATという言葉には車椅子やシーティングのことから、日本で使われるAT、そして視覚障害、聴覚障害から学習障害の方のための支援技術まで、全ての障害を支援する技術を意味するということが再確認できました。初日はATの基礎からシーティング、環境制御装置について学び、2日目はコンピューター・アクセス・テクノロジー、聴覚障害支援技術、3日目には、代替コミニュケーション (AAC) 、視覚障害支援技術、助成金と資金援助、最終日に学習障害のことを学び、ケース・スタディを行いました。この28時間で学んだことを生かして、これからの活動、セミナー、そして製品の輸入や開発に役立てていきたいと思います。

巨大な自分

<2002年1月28~2月3日>
畳一枚分程に大きく引き伸ばされた私のポートレート写真が東京国際フォーラム・Eギャラリーに1月28日~2月3日まで展示されます。これは「東京・人・21」という写真展で、資生堂所属の写真家中村成一さんが撮影した写真の一枚としてです。この写真展のテーマは、十数人の広告写真家の方々の目が捉えた21世紀の東京の人、国内外の人々との交流風景。お近くに行かれる方は、実物よりもよく写っている私を多くの写真の中から探してみてください。こんな場所で仕事しているのがバレてしまいました。

 

あけましておめでとうございます。

<2002年1月1日>
昨年は、長年普及に努力してきたシーティングとユニバーサルデザイン の考え方がようやく理解されはじめた感触がありました。 今年は、シーティングスペシャリストから姿勢スペシャリストとして、 街づくりとユニバーサルデザインのコンサルタントとして、 プライベートではダイブマスターとして、 更に勉強し、技術を向上して より多くの方々のお役に立ちたいと願っています。
みなさま、今年もよろしくお願いいたします。